身辺雑記

公現祭(エピファニー)の思い出

2021年1月6日

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一月六日は公現祭(エピファニー)の祝日ですね。イエス・キリストの顕現と東方の三博士の礼拝を記念する祝日ですが、この時期になるとフランスのパン屋さんには「ガレット・デ・ロワ」(galette des rois, 王様のお菓子)というパイ菓子が売りに出されます。私はこのお菓子が大好物で、留学中、宗教的な理由ではなくガストロノミー的な観点から公現祭を心待ちにしていました。
私が仏文科の学生だった頃、フランス語購読の授業でモーパッサンの短編『マドモワゼル・ペルル』を読んだことがありました。この中で公現祭の過ごし方について触れた箇所があり、フランス人には分かりきったことなのでしょうが、フランスの文化風習を知らない私には何が問題になっているのかよく分かりませんでした。

その後、ストラスブール大学に留学していた一年目のことでしたが、ちょうど公現祭の祝日に、指導教授のミシェル・スタネスコ先生からご自宅に夕食に招待されたことがありました。おそるおそる先生のご自宅を訪れると、同僚の中世フランス文学の准教授の先生も招かれていました。おそらく専門を同じくする者同士、親睦の場を設けたかったのだと思います。やがて夕食の会話が進むうちに『マドモワゼル・ペルル』で語られていた公現祭の風習が問題になっていることに気がつきました。

つまり食後のデザートに、切り分けられたガレット・デ・ロワが振る舞われ、その中に一体だけ隠された「フェーヴ」(fève)という陶器製の小さな人形を引き当てた者が「王様(女王様)」として皆から祝福され、一年の幸福が約束されるというものです。この時は、准教授の先生がフェーヴを引き当てて王様となりました。東方の三博士はそれぞれヨーロッパ人、アフリカ人、アジア人を指し、キリストの誕生が世界から祝福されたことを象徴していると説明してくれたことを覚えています。

私も下宿先の近くのパン屋さんで買ったガレット・デ・ロワで何回かフェーヴを引き当てたことがあります。キリスト教の伝統的なモチーフだけではなく、ハリー・ポッターやスター・ウォーズなど人気映画をモチーフにしたフェーヴも存在しておりコレクターズ・アイテムになっているようです。eBayなどで購入することができますね。
ちなみに写真のフェーヴはアーサー王伝説をモチーフにした私のコレクションの一つで、アーサー王、王妃ギネヴィア、マーリン、ガウェイン、ランスロット、パーシヴァル、妖精ヴィヴィアン、湖の貴婦人、キャメロット城の九体が勢揃いしています。

日本でもガレット・デ・ロワを販売しているパン屋さんがあるみたいですが、フェーヴは入っているのでしょうか?知らないで食べると歯が欠けたり、飲み込んだりして大事故になってしまうかも?
もう十年くらい前にミシェル・スタネスコ先生はALSでお亡くなりになりました。昨年末、喪中のお葉書で、上記の購読授業で『マドモワゼル・ペルル』を教わった橋口守人先生がお亡くなりになられたことを知りました。留学から帰った後、たまたま地元の実業家が橋口先生とお友達だったので再び交流を持つようになったのですが、無名時代の澁澤龍彦のことなど、もっといろいろとお話をお伺いできたら良かった。先生の詩集『風との対話』(朝日出版社、1998年)を手にとって、そんな昔のことを思い出しました。

Pentax KP + Tamron SP AF90mm F2.8 Di MACRO 1:1

        

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